ケンボロ (けんぼろ)
剣ボロ (けんぼろ)
Sleeve Vent Top Facing
Tab Opening
Pointed Tab End (ワーズ・ワードー絵でひく英和大図鑑
による)
Gauntlet (男の服装学(Making the man)
による)
ワイシャツなどの袖口あきの重なり部分に縫い付ける剣形の布
上(表)の剣ボロに対して、下は下ボロと言う。
非常に小さなパーツで、ディテールではあるが、この剣ボロにシャツの良し悪し、ひいてはブランドの良心を語ろうとする傾向が強い。多くのメーカーや評論家達の、多くの知恵と技術と哲学が集積する奇妙な現象が起きている。
ガウントレット (Gauntlet)は英国の呼称
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ガウントレットは、袖の脇あきを示すイギリスの言葉で、カフスの少し手前に当たる箇所である。よく仕立てられたシャツには、カフスの開いているところを留める、脇あきボタンがついている。洗顔するときや、カフスを留める時に折り返せるようにするために、このガウントレット・ボタンは、工夫されたものだった。その意味で、このボタンは生活上の必要から生じてきた物といえる。しかし、場合によっては、この部分から手首がむき出しになることは、靴下とズボンの折り返しの間に足が見えるのと同じように、趣味のよい物ではないといわれるから注意したい。一方、ガウントレット・ボタンをかけることによって、前腕のあたりがきれいにフィットするから、これがあるということは、メーカーの仕立てに関する良心を示す物として考えることも出来る。
男の服装学(Making the man)から
- Gauntlet
- n. (中世騎士の)こて(籠手)
- 長手袋
- (長手袋の)手首
- fling [throw] down the gauntlet 挑戦する.
- take [pick] up the gauntlet 挑戦に応じる; (人・意見などを)擁護する.
シャツの良し悪しを考えてみる
アラン・フラッサーの「男の服装学(Making the man)
」は80年代の紳士服業界に大きなインパクトを与えた影響力の多きな本だったが、当時は、アルマーニ等のイタリアン・モードが紳士服を大きく変えようとしていた時期で、「男の服装学(Making the man)
」はそれを見直そうとする動きにもなったが、流行の大きな流れは替える事が出来なかった。その矛盾の影響を最も大きく受けたのは消費者だったのではないだろうか。
アラン・フラッサーは、紳士服の基本的でトラディショナルな着こなしと、それを購入できる世界中の有名店を紹介し、賢い紳士服の選び方、購入の仕方を丁寧に解説した。確かに、ウィンザー公以来ダンディズムのあり方は英国調の着こなしであり、生き方でもあったのは間違いのないことで、紳士服の着こなしの素地になる物ではあった。しかし、このガウントレット・ボタンを例にとってみても、紳士服全体を観てみると、「そうでありたい」とするブランドと、「そうではありたくない」と考えるブランドがある。いや、あってもいい。選択肢はブランドにも存在する。「トラディショナルでありたい」と考えるか、「コンテンポラリーでありたい」と考えるのは自由である。袖口については、「ボタンを付けて重くなる」よりも、「すっきりとスマートに見せたい」と考えるのもデザイナーや消費者の自由であると私は考える。
では、シャツの良し悪しをどのように見分ければいいのだろうかという問題にたどり着く。ガウントレット・ボタンの有無が「メーカーの仕立てに関する良心を示す物として考えることも出来る。」とするのは、早計である。言い切ってはいないので、他にもあると言うことだが、しかし、ガウントレット(剣ボロ)の作りで見分けることも出来る。なぜこんな小さな箇所に拘らなければならないのかとも思うが、車や家電を購入する際も同じようなことに注意するだろう。メーカーの物づくりに対する姿勢を見極めようとするのは同様の事である。
剣ボロ
なぜ剣ボロが必要なのかは、「男の服装学(Making the man)」を読んで貰いたいが、簡単に考えても分かるだろう。カフスを開けなけらばならないために、袖に切り込みを入れなければならない。その箇所を切りっぱなしに出来ないので処理する必要がある。そのために剣ボロ(いや、剣ボロでなくてもいいのだが他の処理方法でもいい)が、必要である。では、剣ボロの長さ(開きの長さ)はどの程度がいいか。それは、カフスの長さの半分程度である。メンテナンス、アイロンを掛ける際にカフスを開き切る必要があるので剣ボロの長さはそれを基準とする。さて、メーカーの姿勢を判断するにはどこを見ればいいのか。剣ボロも細かな箇所ではあるが、さらにその裏を見ることにする。
きりっぱなしを処理するためのパーツだから、当然その切り口の部分は剣ボロで包(くる)まれているが、しかし、その開きどまりが問題だ。多くの簡単に作られるシャツは、剣ボロ、下ボロの止りの部分は切りっぱなしになっている。それは、ステッチで2重に留めるため、ほとんど解(ほつ)れる事が無いからだ。ほとんどそのままでも問題ない。しかし、その止りの箇所を丁寧に処理する姿勢のあるメーカーには、それ以上の拘りがあると考えられる。20年程前までは、その部分はほとんど問題にされなかった。最大大手のシャツがそれだった。しかし、日本人の衣服に対する関心の高さと、文化度の向上からその部分もなおざりにされなくなっている。「剣ボロの裏処理」といわれ、方法はいくつかある。(1)最も丁寧で手間の掛かる方法として、「玉縁処理」がある。玉縁ポケットと同様の方法を用い、剣ボロの裏の留り部分をポケット口の表と同じ方法を執るやりかたである。つまり、裏なのに表と同じ縫製方法を執ると言うことで、それだけ気配りのされたシャツということになる。若干縫い代が多く重なるので重くはなるが、製品としては全く問題ない。(2)しかし、イタリアのモデリスト達はそこにも軽さと工程の簡素化を図りながら新しい方法を考え出した。丈夫か丈夫じゃないかでいうと丈夫ではないが、非常にスマートな処理法である。「三巻処理」と言ってもいいだろう。今は、イタリア製のシャツのほとんどがその方法で作られている。(3)ラルフ・ローレンはもう一つ違う方法を考え出した。「地縫い返し処理」とでも呼べばいいのか、スマートでありながら丈夫でもある。しかも、工程的にも簡素化されている。参考に手持ちの写真を載せてみる。今後も新たな才能の持ち主が現れて、新しい画期的な処理方法を考案するかも知れない。それらは概ね名もないモデリストによるものだろう。
このように剣ボロの処理には、確かにメーカーのシャツに対する考え方、良心が顕れる。今では、その拘りも頂点に達していると言ってもいいかも知れない。ルイジ・ボレリは、手でグリカンを入れ、ガウントレット・ボタンのボタン・ホールまで手穴だ。当然、ボタンにも、ボタン付けにも拘っている。普通あり得ないが、シャツのボタンに足(根巻き)がついている。ここまでくると、もう他にやりようは無いように思える。「たかがシャツ、されどシャツ」である。
2009/09/10記載Internet Window Shopping 【インターネットで市場調査(市価調)】
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- 参考書籍
- 男の服装学(Making the man)
アラン・フラッサー
(著) 片岡 しのぶ
(訳) 平凡社
(発行)

- ワーズ・ワードー絵でひく英和大図鑑
ジャン=クロード コルベイユ
| アリアン アーシャンボウ
| 長崎 玄弥
(著) 同朋舎出版(発行)

- 参考写真、イラスト
- 男の服装学(Making the man)
アラン・フラッサー
(著) 片岡 しのぶ
(訳) 平凡社
(発行)

- 手持ちのシャツのスキャン
- 手持ちのシャツの剣ボロの表 Polo by Ralph Lauren インド産 (株)インパクト21
- 手持ちのシャツの剣ボロの裏側 Polo by Ralph Lauren インド産 (株)インパクト21
- 手持ちのシャツの剣ボロの裏側の解説 Polo by Ralph Lauren インド産 (株)インパクト21
- 著者近著 Dressing the Man: Mastering the Art of Permanent Fashion
- Alan J. Flusser


